毎年、クリスマス前になるとやっていたことがある。
それが「ゆっくり30〜35km走」だ。
マラソンシーズン前の定番メニューとして、なんとなく続けてきた――
というより、**「クリスマス前にもう長くは走れなくなるから、その前に年内最後の大きなトレーニングを入れておく」**という意味合いが強かった。
ケーキ屋にとって、12月17日〜27日あたりは一年でいちばん忙しい時期。
この期間はほとんど走れないから、
「その前の最後の休みで、30〜35kmを1本入れておこう」
という“儀式”のような感じで、毎年クリスマス前のロング走を行っていた。
走り終えたあとは、
「これだけ走ったんだから大丈夫だろう」
と、自分に言い聞かせるための儀式でもあったと思う。
でも、心のどこかではずっとこう感じていた。
「この3時間、本当に意味あるのかな?」
「もっと効率良く、タイムにつながる練習があるんじゃないか?」
今年も例にもれず、
「12月17日から27日までほぼ走れないから、その前の16日に30km走を入れよう」と考えていた。
けれどそこで、いよいよその違和感から目をそらせなくなった。
「本当に今年も、同じ“儀式の30km”をやるべきなのか?」
一度ちゃんと考えてみることにした。
30〜35km走の“儀式感”
30km走には、もちろん良い面もある。
- 長時間動き続ける経験
- 30km以降のしんどさを、一度は体に思い出させておくこと
- 「ここまで走れた」という安心感
特に、まだロング走の経験が少ないランナーにとっては、
一度30kmを走り切ることそのものが、大きな自信になる。
ただ僕の場合は、
すでにウルトラマラソンも完走していて、
「長くゆっくり走る経験」はそれなりに積んできた。
そうなると、毎年の30〜35km走は次第にこんな存在になっていった。
- 「みんなやっているから、自分もやらないと不安」
- 「やらないとマラソンランナーじゃない気がする」
- 「でも、本音ではちょっとめんどくさい」
走るのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
それでも、3時間近くまとまった時間を取るというのは、
仕事をしながらの生活の中ではかなり大きい。
- 家族との時間
- 仕事の準備
- 自分の休息や、他の趣味
それらを削ってまで「儀式の30km」を続ける意味が、本当にあるのか。
今年に関して言えば、
12月17〜27日のあいだは、どう頑張っても1時間の練習時間は取れそうにない。
でも、よくよく考えてみると、
「まったく走れないわけじゃなくて、15〜30分なら作れる日もあるはず」
とも思った。
「だったら今年は、
無理して16日に30kmを1本ドカンと入れるんじゃなくて、
短時間でも“効果のある練習”をちょこちょこ積んでみよう」
そんな考えが、少しずつ具体的になってきた。
今年は、この問いに対して「もう“儀式”はいらない」と答えてみることにした。
サブ3.15に必要なのは、“儀式”じゃなくて“質”
僕の次の目標は、フルマラソンで サブ3.15(3時間15分切り) だ。
そのために必要なのは、冷静に考えると次のような力だと思う。
- Mペース(マラソンペース)を、できるだけ楽に感じられる力
- LTペース(しんどいけれど粘れるペース)で動き続けられる心肺
- スピードに対する「心臓の慣れ」(Iペース・1kmインターバルなど)
つまり、
- Tペース(LT)
- Mペース
- Iペース(インターバル)
この3つのゾーンを、いいバランスで積み上げていくことが大事だと感じている。
そう考えたとき、
「ゆっくり30〜35kmを1本だけ走る」
ことの優先度は、僕の中でかなり下がった。
3時間の30km走より、「1時間×質の高い練習」を選ぶ
クリスマス前は仕事も忙しく、まとまった時間を取りにくい。
そんな中で、30〜35km走に3時間を使ってしまうと、
その前後の日はどうしても動きづらくなる。
それよりも、僕はこう考えるようになった。
同じ3時間があるなら、
「1時間×3本のポイント練習」に分けた方が、確実にタイムにつながる。
例えば:
- 1日目:LT走(4’20〜4’25/kmで10〜20分)+Eジョグ
- 2日目:Mペース走10〜12km(4’30〜4’40/km)
- 3日目:1000m×3〜4本(VO2max・Iペース)
それぞれは1時間前後で終わる。
しかも、どれも「サブ3.15のレースペース」に直結する内容だ。
同じ3時間を使うなら、
“やり切った感”ではなく、“伸びた感”を取りにいく。
今年は、そういう選択をしてみたいと思った。
忙しい時期こそ、短時間の「濃い練習」でつなぐ
もうひとつ、毎年悩みのタネだったのが、クリスマス前後の忙しい期間だ。
今年も、12月17日〜27日あたりは思うように走れない日が増える。
とはいえ、まったく走れないわけではなく、
「1時間は無理でも、15〜30分なら作れる日もあるはず」
というのが、現実的な感覚だ。
そこで考えたのが、
「短時間でも心臓とペースの記憶を保つメニュー」 だ。
例えば:
LTミニ(20〜30分メニュー)
- ジョグ 5〜7分
- LTペース(4’20〜4’25)で6〜8分
- 残りをジョグでつないで終了
1kmインターバル1〜2本だけの日
- ジョグ 5〜10分
- 1km(3’55〜4’05)を1〜2本
- ジョグで戻って合計20〜30分
ジョグだけの日
- 20〜30分、心拍を上げすぎないEペースでつなぐ
忙しい時期は、
「長く走れないから意味がない」
と思ってしまいがちだ。
でも実際には、短時間でもLTやIペースの刺激を入れておくことで、
心臓や脚のキレを保つことができる。
「走行距離」よりも、
「どのゾーンでどれだけ積めたか」
という視点で見ると、20〜30分の練習にも十分な価値がある。
今年は“儀式”を卒業して、目標に直結する練習へ
本音を言えば、30〜35km走はやっぱり少しめんどくさい。
仕事をして、家のこともあって、そのうえで3時間を確保するのは簡単じゃない。
だからこそ、
「本当に大事なのは何か?」
を自分に問い直してみた。
- 毎年なんとなく続けてきた30kmの儀式
- それよりも、1時間以内の練習を賢く積み重ねること
今年は、後者を選ぶ。
ゆっくり30kmを1回走った安心感ではなく、
T・M・Iペースを何度も身体に染み込ませていく積み重ねで、サブ3.15を狙いにいく。
同じように、
「30km走って本当に意味あるのかな?」
と感じている人がいたら、
一度立ち止まって、自分の目標と生活リズムを考えてみてもいいかもしれない。
儀式をやめることは、サボりではなく、
“自分に合ったやり方を選び直すこと” なんだと思う。


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