走ることと、お菓子作りに共通するもの【後編】土台、継続、感覚、そして自分と向き合うこと

前編では、

挑戦すること。
考えること。
失敗を経験として捉えること。
自分のペースでゴールを目指すこと。

について書きました。

後編では、走ることとお菓子作りに共通する、

土台の大切さ。
無理をしすぎず続けること。
小さな変化に気づく力。
継続することで感覚が磨かれること。
結果だけではなく、過程にも価値があること。
自分と向き合う時間。
毎日の積み重ねが大きな差になること。

について書いていきます。

強くなるためには、まず土台が必要

マラソンで速くなるためには、さまざまな練習があります。

速いペースで走る練習。
一定のペースを長く維持する練習。
心肺機能に負荷をかける練習。
長い距離を走り続ける練習。

しかし、こうした練習を支えているのは、ジョギングと呼ばれる基本的な練習です。

ジョギングだけを見れば、派手さはありません。

速く走るわけでもなく、すぐに大きな結果が出るわけでもありません。

それでも、ジョギングを重ねることで、長く動き続けるための体が作られます。

心肺機能や筋肉、腱、関節が少しずつ走ることに慣れていく。

その土台があるからこそ、速い練習や厳しい練習にも耐えられるようになります。

土台がなければ、応用は続かない

速くなりたいと思うと、つい強度の高い練習をしたくなります。

頑張った感覚もありますし、結果へ早く近づいているようにも感じます。

しかし、土台ができていない状態で無理な練習を重ねれば、疲労が抜けなくなったり、体を痛めたりします。

一時的に速く走れたとしても、長く続けることはできません。

お菓子作りも同じです。

新しい技法や華やかな飾り、珍しい組み合わせに目が向きやすいですが、その前に基本が大切です。

計量を正確にすること。
素材の状態を見ること。
温度を管理すること。
混ぜ方や立て方を理解すること。
火の入り方を見極めること。

こうした基本が身についていなければ、応用を安定して再現することはできません。

応用は、基本の積み重ねと組み合わせ

お菓子作りにおける応用は、まったく新しい何かが突然生まれるわけではありません。

基本となる技術を積み重ね、それらを組み合わせることで生まれます。

スポンジ、生クリーム、ムース、焼き菓子、クリーム、ソース。

それぞれの基本を理解しているからこそ、素材や食感を組み合わせ、新しい商品へ発展させることができます。

走ることも同じです。

日々のジョギングがあり、その上にさまざまな練習を積み重ねることで、少しずつ強くなっていきます。

派手なことを始める前に、まず土台を作る。

地味に見える基本を大切にできることが、長く成長していくためには必要だと思います。

h2 長く続けるためには、マイペースが大切

走る時に最初から飛ばしすぎれば、後半に必ず苦しくなります。

周りのペースにつられて、自分の力以上の速さで走れば、最後まで持ちません。

練習でも、頑張りすぎる日が続けば、疲労が蓄積します。

体が回復する前に、また強い負荷をかける。

それを続けていれば、やがて痛みや故障として表れます。

頑張れば頑張るほど成長するわけではありません。

休むことも含めて、自分に合ったペースを守る必要があります。

仕事も、頑張りすぎれば続かない

仕事でも、頑張ろうと思えばいくらでも頑張ることができます。

もっと商品を増やしたい。
もっと店を良くしたい。
もっとお客様に喜んでもらいたい。
もっと売上を伸ばしたい。

そう思えば、休まずに働くこともできるかもしれません。

しかし、自分の力を毎日すべて出し切っていたら、長くは続きません。

疲れが溜まれば判断力が落ちます。

小さな変化に気づけなくなり、お菓子の仕上がりや接客にも影響が出ます。

頑張り続けるためには、頑張りすぎないことも必要です。

7割の力で結果を出せる状態を作る

自分は、毎回10割の力を出し切るよりも、7割ほどの力で結果を出せる状態を作る方が大切だと考えています。

余裕があるから、周りを見ることができます。

何か予想外のことが起きても、対応できます。

次の日も、また同じように動くことができます。

一度だけ大きな結果を出すのではなく、安定して結果を出し続ける。

それが、長く続けるポイントであり、成長し続けるための秘訣だと思います。

マイペースという言葉は、ゆっくりすることではありません。

自分の力を理解し、無理なく前へ進み続けることです。

h2 走ることで、小さな変化に気づくようになった

走っていると、自分の体の小さな変化を感じることが増えます。

今日は脚が張っている。
少し疲れが残っている。
呼吸がいつもより苦しい。
体が重く感じる。
水分が足りていない。
栄養が不足している。
走り方が少し崩れている。

外から見れば分からないような小さな変化でも、自分の中でははっきりと感じることがあります。

その変化に早く気づければ、練習の内容を変えたり、休養を取ったりできます。

無視して走り続ければ、大きな不調や故障につながるかもしれません。

小さな違和感を見逃さない

体は、いきなり大きく壊れるわけではありません。

その前に、何かしらの小さな合図を出していることが多いと思います。

少し重い。
いつもと違う。
少し痛い。
疲れが取れない。

その小さな違和感を見逃さず、今の自分に必要なものを考える。

走ることを続ける中で、自分の体を細かく観察する癖がつきました。

そして、その癖は仕事にも生きています。

店の中にも、小さな変化はたくさんある

お菓子作りや店の運営にも、小さな変化がたくさんあります。

飾りつけのわずかな違い。
商品の並べ方。
ショーケースの見え方。
店内の掃除。
厨房の温度や湿度。
生地やクリームの状態。
オーブンの火の入り方。
お客様の反応。

どれも、一つだけを見れば些細なことかもしれません。

しかし、こうした小さな部分の積み重ねが、商品の品質や店の印象につながります。

少しの乱れに気づけるか。

いつもと違う状態を感じ取れるか。

その違いを放置せず、すぐに整えられるか。

走ることで身についた観察力は、お菓子作りや店づくりにもつながっていると思います。

継続することで、感覚は磨かれていく

初めて走った時には、自分の体の状態を細かく感じ取ることはできませんでした。

ただ苦しい。
脚が重い。
疲れた。

その程度しか分からなかったと思います。

しかし、走ることを続けていると、少しずつ違いが分かるようになります。

今日は疲労によって重いのか。
気温や湿度の影響なのか。
補給が足りていないのか。
走り方が乱れているのか。

同じ「重い」という感覚でも、原因の違いを考えられるようになります。

h3 毎日繰り返すから、違いが分かる

お菓子作りでも、毎日同じものを作るからこそ、小さな違いに気づけます。

今日は生地が少し緩い。
クリームの立ち方が違う。
チョコレートの状態がいつもと違う。
焼き上がりが少し早い。
素材の水分量が違う。

数字だけでは表せない感覚があります。

それは、誰かに一度教わっただけで身につくものではありません。

何度も作り、何度も見て、何度も触れる。

その積み重ねによって、少しずつ感覚が磨かれていきます。

感覚は、才能ではなく経験から生まれる

職人の感覚というと、特別な才能のように見えるかもしれません。

しかし、その多くは継続によって身についた経験だと思います。

昨日と今日の違いを感じる。
うまくいった時と、うまくいかなかった時を比べる。
少しずつ調整しながら、自分の中に基準を作っていく。

走ることも、お菓子作りも同じです。

続けることで経験が増え、経験が感覚を育てます。

最初から分かる人はいません。

分からない状態でも続けることで、少しずつ見えるものが増えていきます。

結果だけでなく、そこへ向かう過程にも価値がある

大会には、タイムや順位という結果があります。

目標を達成できればうれしいですし、届かなければ悔しさもあります。

結果は大切です。

目標があるから頑張ることができ、成長するために必要なことを考えられます。

しかし、結果だけがすべてではないとも思っています。

h3 一つの結果の裏には、たくさんの時間がある

一本のレースを走るために、何か月も練習を重ねます。

暑い日も、寒い日も、疲れている日もあります。

思うように走れない日もあれば、練習をやめたくなる日もあります。

それでも少しずつ積み重ね、大会当日を迎えます。

結果として表れるのは、ほんの数時間です。

しかし、その数時間のために積み重ねた日々の中で、体も考え方も成長しています。

お菓子作りも同じです。

一つの商品が完成するまでに、何度も試作します。

配合を変え、温度を変え、素材を変え、作り方を見直す。

完成した商品だけを見れば、その過程はお客様には見えません。

しかし、その見えない時間があるからこそ、商品に深みが生まれます。

ゴールへ向かう時間が、自分を作っていく

目標を達成することだけが価値ではありません。

そこへ向かう中で考えたこと。
苦しかったこと。
迷ったこと。
工夫したこと。
続けたこと。

そのすべてが、自分の経験になります。

結果が思いどおりでなかったとしても、その過程までなくなるわけではありません。

目標へ向かう時間そのものが、自分を成長させてくれます。

だから自分は、結果を大切にしながらも、そこへ向かう過程にも価値があると思っています。

走る時間は、自分と向き合う時間でもある

ランニングは、一人で過ごす時間が長いです。

誰かと会話をするわけでもなく、目の前の作業に追われるわけでもありません。

自分の呼吸や足音を感じながら、ただ前へ進みます。

その時間の中で、自然とさまざまなことを考えます。

仕事のこと。
新商品のこと。
店のこと。
お客様のこと。
家族のこと。
これからの人生のこと。

普段は忙しくて整理できていないことが、走っている間に少しずつ形になっていきます。

体を動かすことで、頭の中が整っていく

悩みがある時、机の前で考え続けても答えが出ないことがあります。

同じことを何度も考え、頭の中がいっぱいになってしまう。

しかし、走り始めると、少しずつ考えが整理されていきます。

体を動かすことによって、気持ちが切り替わる。

悩みそのものが消えるわけではありませんが、少し離れた場所から見られるようになります。

自分にとって走る時間は、体を鍛える時間だけではありません。

頭の中を整え、自分の本当の気持ちを確認する時間でもあります。

自分が何を大切にしたいのかを考える

仕事をしていると、目の前のことに追われます。

売上、製造、接客、人員、原価、発信。

考えることはたくさんあります。

忙しい中では、何のためにやっているのかを見失いそうになる時もあります。

走っている時は、一度そこから離れられます。

自分はどんな店を作りたいのか。
どんなお菓子を作りたいのか。
お客様に何を届けたいのか。
これから、どんな人生を歩みたいのか。

そうした根本の部分を考えることができます。

走ることは、自分の現在地を確認する時間にもなっています。

毎日の積み重ねが、最後に大きな差になる

一日だけ走ったからといって、急に速くなるわけではありません。

一度だけ良い練習ができたからといって、すべてが変わるわけでもありません。

しかし、一日一日の変化は小さくても、それを積み重ねていけば、数か月後、数年後には大きな違いになります。

昨日より少しだけ長く走れた。
前より少しだけ楽に走れた。
同じペースでも余裕が出てきた。

その小さな変化を繰り返しながら、少しずつ強くなっていきます。

お店も、一日では変わらない

店づくりも同じです。

一度の改装や一つの新商品だけで、すべてが良くなるわけではありません。

商品の見せ方を少し変える。
説明文を見直す。
掃除を丁寧にする。
製法を一つ改善する。
お客様の声を次に生かす。

毎日の小さな改善は、すぐには大きな結果として見えないかもしれません。

しかし、それを積み重ねることで、商品や店の魅力が少しずつ育っていきます。

派手な近道よりも、今日できることを積み重ねる

すぐに大きく変わる方法を探したくなる時があります。

簡単に速くなれる練習。
すぐに売れる商品。
一気に店を有名にする方法。

しかし、本当に長く残る力は、一日で身につくものではありません。

派手な近道ではなく、今日できることを一つずつ続ける。

その積み重ねが、最後に大きな差になります。

昨日よりも少しだけ前へ進む。

その繰り返しが、自分の走力を作り、お菓子を作る技術を磨き、THE NICOLEという店を育ててきたのだと思います。

走ることは、自分の生き方そのものにつながっている

走ることと、お菓子作り。

始めた目的も、行う場所もまったく違います。

しかし、続ければ続けるほど、共通する部分が多いと感じます。

基本を大切にして、土台を作ること。

自分の力を理解し、無理のないペースで続けること。

小さな変化に気づき、必要な修正をすること。

繰り返すことで感覚を磨くこと。

結果だけではなく、そこへ向かう過程も大切にすること。

自分と向き合いながら、毎日の一歩を積み重ねること。

これらは、走ることやお菓子作りだけに限った話ではありません。

仕事にも、店づくりにも、人生にもつながっています。

走ることで学んだことが、お菓子作りに生きています。

お菓子作りで学んだことが、走ることにも生きています。

自分にとってこの二つは、別々のものではありません。

どちらも自分を成長させ、自分らしい生き方を作ってくれる大切なものです。

今日すぐに大きく変わらなくてもいい。

歩みを止めず、自分のペースで、一歩ずつ前へ進む。

それが、走ることとお菓子作りを通じて、自分が大切にしている考え方です。

京都の洋菓子店「THE NICOLE」店主・ニコルです。
ふわふわシフォンケーキや体にやさしいスイーツを作りながら、マラソン・トライアスロンにも挑戦している《日本一走るパティシエ》でもあります。
若い頃から心と体について学び続けてきた経験を活かし、「おいしい」「楽しい」「またがんばろう」と思える時間をお届けするのがライフワーク。
ブログでは、お菓子作りのコツはもちろん、走ること・生き方・メンタルのことも、等身大の言葉で発信していきます。

ランニング基礎 練習について日本一走るパティシエ自身について
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