12月のクリスマス前後は、ケーキ屋にとって一年でいちばん慌ただしい時期です。
僕が修行していた頃は、
12月に入ると「早朝から夜遅くまで働く」のが当たり前でした。
睡眠時間を削って、ひたすらケーキを作り続ける。
そんな“気合と根性”で乗り切る時代だったと思います。
でも今は、働き方改革や価値観の変化もあり、
あの頃と同じ働き方を、そのまま若いスタッフに求めることはできません。
それでも僕の中では、
「ケーキ屋がクリスマスを頑張らないって、どうなんだろう?」
という気持ちも、正直どこかに残っています。
今日は、ケーキ屋としてクリスマスケーキに向き合ってきた立場から、
少し僕自身の考えを書いてみたいと思います。
クリスマスはケーキ屋にとって特別な時期
修行時代の「12月は戦場だった」
僕が修行していた頃の12月は、とにかく「働く、働く、ひたすら働く」でした。
- 仕込みのためにまだ暗い時間から出勤
- 閉店後も、深夜まで仕上げと準備
- 休憩らしい休憩もほとんどなく、気がつけば一日が終わっている
今振り返ると、「よくあれだけやっていたな」と思うくらいの働き方です。
当時は、
- 体力的には本当につらい
- でも、ケーキが並び、喜んで受け取ってもらえると報われる
そんな矛盾した感情の中で、
「これがケーキ屋のクリスマスなんだ」と自分に言い聞かせていました。
働き方改革と価値観の変化
一方で、今の時代は明らかに変わってきています。
- 働き方改革
- 労働時間への意識の変化
- 「修行だから仕方ない」という感覚への違和感
若いスタッフにとって、
ケーキ屋の仕事は「修行」ではなく、ひとつの「職業の選択」です。
- 長時間労働が当たり前
- 休みもなく働き続ける
- 体力と気力で乗り切ることが美徳
そんなスタイルに、無理が出ている現実もあります。
「修行だから耐えるべき」という考え方が合わない人が増えたというより、
社会全体が、その働き方を見直す方向に動いているのだと思います。
クリスマスケーキを取り巻く現実
原材料の高騰と人件費の上昇
ここ数年で、ケーキ屋を取り巻く環境は大きく変わりました。
- 小麦粉
- 卵
- 乳製品
- ナッツ、チョコレート
など、ほとんどの材料が値上がりしています。
特にクリスマス前のいちごは、
12月20日以降になると1パック2000円を超えることもあります。
さらに、
- 最低賃金の上昇
- 人手不足による人件費の増加
も重なり、「頑張っても利益が残りにくいクリスマス」の店も増えています。
予約限定・縮小営業が増えている背景
その結果として、クリスマスのやり方も変わってきました。
- 予約限定のみ、当日のホールケーキ販売なし
- 予約ケーキだけに集中して、当日販売分は作らない
- 種類や数量を大幅に絞る
こういったスタイルを選ぶお店が増えたのは、
決して「やる気がないから」ではなく、現実的な判断でもあります。
- 無理に大量生産しても利益が出にくい
- スタッフの負担が大きすぎる
- 「やるだけ赤字」に近いクリスマスになってしまう
そう考えると、クリスマスを“縮小”したくなる気持ちも、よく分かります。
それでも心のどこかで残る「もやもや」
ただ、その一方で、僕の中にはこんな感情もあります。
「ケーキ屋がクリスマスを頑張らないで、ケーキ屋なのか?」
これが、もしかしたら「古い考え」なのかもしれないことも自覚しています。
でも、どうしても消えない感覚として、
クリスマスはケーキ屋にとって
- 一年の集大成
- 自分の技術と段取りを出し切る場
- 「やり切った」と言える特別な行事
だと感じているのも事実です。
「この時期はこの業界が忙しい」役割を持つ仕事たち
クリスマスにケーキ屋が忙しくなるのは、ある意味で**「その業界の役割」**だと思っています。
同じように、
- 正月前の和菓子屋さん:
餅やお正月用の和菓子づくりでフル回転 - 酒蔵や酒屋さん:
年末年始に向けたお酒の出荷・お歳暮シーズン - お花屋さん:
クリスマス〜お正月飾り、卒業・入学・母の日などのシーズン - 美容室:
七五三、成人式、卒業・入学シーズン、年末の“切り納め” - 着物・レンタル衣装店:
七五三、成人式、結婚式シーズン
それぞれの業界には「この時期は自分たちの出番」という季節があります。
ケーキ屋にとってのクリスマスも、
まさにそういう**“指名されたタイミング”**だと感じています。
クリスマスは「一年の集大成」を発揮する場所
普段の仕事と、新しく学んだことを全部込める
僕にとってクリスマスは、単なる繁忙期ではなく、
- 普段やっていること
- 一年で新しく学んだ技術
- 日々の仕事で磨いてきた段取りや作業性
これらを全部まとめて試される場所だと思っています。
- どれだけ効率よく仕込みを進められるか
- 同じクオリティのものを、何台も続けて作れるか
- スタッフ全員で、ミスなく、丁寧に仕上げ続けられるか
クリスマスケーキは、僕にとって
「一年間の技術・知識・経験を詰め込んだ作品」
のような存在です。
量をこなした先にしか「質」は生まれない
僕は、技術や知識は量の先にあると思っています。
- 楽して
- みんなと同じようにやって
- 簡単に
それで本物の技術や経験が身につくとは思っていません。
失敗をしながら、
何度も同じ作業を繰り返しながら、
ときにはしんどい思いもしながら、
量をこなしてきた人だからこそ、質を追求していける。
クリスマスは、まさにその「量」と向き合う時期です。
だから僕の中では、
「クリスマスをやらない」という選択肢は、今のところ考えられない
というのが本音です。
働き方改革とワークライフバランスについて思うこと
「仕事をほどほどに」だけが正解ではない
働き方改革やワークライフバランスという言葉が広がってから、
- 仕事はほどほどに
- プライベートを大事に
- 無理をしない生き方が良い
というメッセージが強くなったように感じます。
それ自体は、とても大事な流れだと思います。
心や体を壊してまで働くのは、やはり違うからです。
ただ、僕はこうも思っています。
ワークライフバランス=「仕事を減らして、余暇を増やす」だけではない。
「好きなことを仕事にする」という意味のバランス
もし、仕事そのものが本当に好きで、
その時間に喜びややりがいを感じているなら、
- 長く働く=必ずしも悪いことではない
- 忙しい時期も「自分で選んだ時間」として受け取れる
そんなケースもあると思うのです。
嫌な仕事を我慢して続けているなら、
「プライベートを充実させたい」と思うのは自然です。
でも、仕事そのものが楽しくて、
クリスマスという大きな山場を乗り越えることに喜びがあるのなら、
それもまた、ひとつのワークライフバランスの形だと思います。
仕事と人生のバランスを取ること
= 仕事を減らすことだけではなく、
「心から楽しめる仕事」と「自分の人生」をどう重ねるかを考えること。
僕はそう捉えています。
サンタを飾る瞬間に訪れる「癒やし」と「報われた感覚」
忙しさの中でふっと訪れる、癒やしの時間
クリスマス期間は、正直に言って本当に忙しいです。
- 仕込み
- 焼成
- デコレーション
- 受け渡しの段取り
やることは山ほどあります。
それでも、ケーキの上にサンタさんを飾り、
クリスマスのデコレーションが完成した瞬間、
胸の中にふっと「癒やし」が生まれます。
「可愛いな」
「これはきっと喜んでもらえるだろうな」
そう思える時間があるからこそ、
どれだけ量をこなしても、気持ちが折れずに続けられるのだと思います。
一人ひとりにとって「たった一つのクリスマスケーキ」
僕たちにとっては、
同じケーキを何十台・何百台と作るクリスマスですが、
お客様にとっては、
**「その年の、たった一つのクリスマスケーキ」**です。
- 家族で囲むケーキ
- 子どもが楽しみにしているケーキ
- 特別な記念日のケーキ
その瞬間の写真や記憶に、僕たちのケーキが残ると思うと、
やはり手を抜くことはできません。
おわりに:これからも、クリスマスケーキを作り続けたい
物価高、人手不足、働き方改革。
クリスマスを取り巻く環境は、確かに以前とは変わりました。
- 予約限定にするお店
- 当日の販売をやめるお店
- クリスマス自体を縮小するお店
それぞれが、それぞれの事情と向き合いながら、
無理なく続ける方法を模索しているのだと思います。
その上で、僕自身は、今のところ
「クリスマスをやらない」という選択肢はない
と感じています。
- クリスマスは、一年の集大成を発揮する場所
- 自分の技術や知識を試す場所
- スタッフと一緒に「やり切った」と言える行事
だからこそ、これからも、
お客様の思い出に残るクリスマスケーキを作り続けたいと思っています。
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