シフォンケーキって、ふわふわで軽くて、好きな人が多いお菓子だと思います。
でも実は、パティシエとしての僕は、最初はシフォンケーキがあまり好きではありませんでした。
「軽いだけで、食べた気がしない」
「生クリームをつけてなんとか食べさせてる感じがする」
正直、そんなふうに思っていた時期もあります。
そんな僕が、いまでは毎日のようにシフォンと向き合い、
「どうしたらもっとおいしくなるか」を考え続けている。
今日は、なぜここまでシフォンケーキにハマったのか、
その理由を「4つのテーマ」としてお話ししてみたいと思います。
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① もともとはシフォンが好きじゃなかったパティシエ
軽いけど、どこか物足りなかった昔のシフォン
最初に正直に言うと、
僕はもともとシフォンケーキが好きではありませんでした。
軽くて柔らかい生地だけど、どこかパサパサしている。
口溶けも悪くて、生クリームがついてこないと物足りない。
「生クリームでごまかしてるだけちゃうん?」
「生地自体に美味しさを感じへんな…」
そんなふうに思っていたので、
自分から積極的に選ぶケーキではありませんでした。
「こんなの誰が食べるんや?」と思っていたころ
当時の僕は、
デコレーションが華やかなケーキや、手の込んだ構成のケーキの方に興味がありました。
シフォンみたいに材料も見た目もシンプルなお菓子には、
正直、あまり魅力を感じていませんでした。
「こんなの誰がそんなに食べるんや?」
「なんでこんなに人気なんやろ?」
そう思っていたからこそ、
後から“本当においしいシフォン”に出会ったときの衝撃が大きかったのかもしれません。
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② シンプルだからこそ気づいた「素材の奥深さ」
シフォンに使う材料は本当にシンプル
シフォンケーキに使う材料は、とてもシンプルです。
• 卵
• 砂糖
• 粉
• 油
• 水分(牛乳や豆乳など)
基本的には、これだけで成り立ちます。
若い頃の僕は、
「材料が少ない=簡単なお菓子」と思っていました。
だからこそ、シフォンには興味が湧かなかったのかもしれません。
プティドール時代、「本当においしいシフォン」に出会う
転機になったのは、2005年。
今はもう無くなってしまいましたが、
滋賀県野洲にあった「プティドール」というお店でシェフを任されていた頃です。
当時、ロールケーキブームの次の一手として、
「次にどんな商品を出すか?」を考えながら、いろいろなケーキを試作していました。
その中の候補のひとつがシフォンケーキでした。
いろんな店のシフォンを食べているうちに、
その中に、
• ふんわり、しっとり、なめらかな食感のシフォン
• 生クリームがなくても、生地だけでちゃんとおいしいシフォン
に出会ったんです。
その瞬間、
「シフォンって、こんなに違うものになるんや」
「シンプルな分だけ、素材と配合がものすごく奥深いお菓子なんやな」
と感じました。
そこから、
どこのよりもふんわり・しっとりしていて
生クリームがなくてもおいしく食べてもらえるシフォンケーキ
を作ろうと、本気で向き合い始めました。
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③ スタッフの失敗から生まれた“ぷるぷる食感”
計量ミスから始まった、忘れられない1台
シフォンに本気で取り組み始めてからも、
もちろん失敗だらけでした。
その中でも忘れられないのが、スタッフの「計量ミス」から生まれた1台です。
ある日、仕込みを任せていたスタッフが、
油・牛乳・生クリームの割合を間違えて計量してしまいました。
気づいた瞬間、正直こう思いました。
「なんでここでミスるねん…」
呆れる気持ちもあったし、
「今日はもうあかん日やな」と思ったくらいです。
プルプル揺れたシフォンに感じた“全部つながった瞬間”
それでももったいないから、とりあえず焼いて、冷まして、型から外してみました。
そのとき目の前にあったシフォンは、
それまで見たことのないような“ぷるぷる感”をしていました。
型の中でそっと揺れるような、
手に持つと少しふるえるような、独特のなめらかさ。
カットして食べてみると、
• ふわっと軽いのに
• しっとり、なめらかで
• 舌の上でスッとほどけていく
そんな食感でした。
その一口で、
• 油と牛乳・生クリームの「割合」
• メレンゲの泡立て方
• 焼き上げ方
すべてが一本の線でつながったような感覚がありました。
「あの失敗がなければ、今のシフォンには出会えていない」
今でも本気でそう思っています。
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④ からだへのやさしさと「続けて食べられる」ケーキ
スポーツをするからこそ気になる“からだの声”
私はふだんからランニングやスポーツもしているので、
「おいしさ」と同じくらい、「からだへの負担」も気になるタイプです。
ケーキは決して“健康食品”ではありません。
それでも、
• 食べたあとに胃が重くならないこと
• 罪悪感だけが残るような甘さにしないこと
• 日常的に食べてもらっても大丈夫だと、自分で思えるバランスにすること
• 生クリームがなくても、しっとり満足感があること
これは、シフォンを作るうえで大事にしているポイントです。
生地そのものを楽しめるように工夫していること
そのために、配合や素材選びでこんな工夫をしています。
• バターではなく、植物油(米油など)を使う
• 甘さの「キレ」と「後味」を意識して、甘いけれどしつこくない設計にする
• 生クリームやデコレーションに頼りすぎず、生地そのもののおいしさで勝負する
「ケーキは太るから」とガマンだけしてしまうのではなく、
うまく付き合いながら、心もからだも少し軽くなる。
そんなおやつ時間になればいいな、という想いを、
1台1台のシフォンに込めています。
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おわりに:4つのテーマが、今のシフォンを支えている
改めて振り返ると、
僕がシフォンケーキにハマった理由は、この4つのテーマに集約されます。
1. もともとはシフォンが好きじゃなかった → だからこそ「本当においしいシフォン」を追いかけるようになった
2. シンプルな素材だからこそ、その奥深さに気づいた
3. スタッフの失敗から生まれた“ぷるぷる食感”との出会い
4. からだへのやさしさと「続けて食べられる」ケーキでありたいこと
この4つは、今もシフォンを焼くたびに、頭のどこかに必ずあります。
ここから先のブログでは、
それぞれのテーマをもう少し細かく分けて、
• 卵・油・粉など、素材へのこだわり
• からだに負担をかけにくい甘さや配合の考え方
• 日常のどんなシーンでシフォンを楽しんでほしいか
そんな話も、少しずつ書いていけたらと思っています。
「シフォンって、そんな背景があったんや」
そう感じながら食べてもらえたら、作り手としてとてもうれしいです。



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