シフォンケーキの食感を決める大きな要素のひとつが「粉」です。薄力粉・強力粉・コーンスターチ・米粉など、種類や配合を少し変えるだけで、ふわふわ感やしっとり感、口どけは大きく変わります。今回は、プロが粉を選ぶときにどんなことを考えているのか、その考え方の部分をまとめました。
シフォンケーキ第3話は、「粉と食感の話」です。
同じレシピに見えても、どんな粉をどのくらい使うかで、ふわっと軽いシフォンになるのか、しっとりもっちり寄りになるのかは大きく変わります。
ここでは、薄力粉・強力粉・コーンスターチ・米粉などの特徴と、ふわふわとしっとりをどうバランスさせていくかという「考え方」を中心にまとめていきます。
粉がシフォンの「骨格」と「食感」を決める

なぜシフォンは薄力粉が基本なのか
シフォンケーキは、基本的には薄力粉を使うことが多いお菓子です。
薄力粉はたんぱく質(グルテン)の量が少なく、ケーキやクッキーなど「軽い食感」に向いた粉です。
シフォンでは、メレンゲの泡で生地をふくらませ、その泡のまわりを薄力粉がやさしく支えているイメージに近いです。
薄力粉の量が多すぎると、
- 生地が重くなって膨らみにくくなる
- きめは細かいけれど、少し詰まったような食感になる
逆に少なすぎると、
- 焼き上がりはふくらんでも、冷めたときに大きくしぼみやすい
- 表面や底の方がベコっとへこむ
といったことが起こります。
「どれくらい薄力粉を入れるか」は、ふわふわ感と生地の安定感、両方のバランスを取るための大事なポイントです。
強力粉や準強力粉を少し混ぜるとどうなる?
強力粉や準強力粉は、たんぱく質が多く、パン向きの粉です。
これをシフォンに少しだけ混ぜると、
- 生地に「もちっ」とした弾力が出る
- 焼き縮みしにくく、カットしたときに形が安定しやすい
といった変化が出ます。
ただし、入れすぎるとグルテンが強くなりすぎて、
- 生地がかたく、パン寄りの食感になる
- シフォンらしい軽さが失われる
という方向に寄っていきます。
「薄力粉だけだと頼りないけど、強力粉を多くすると別物になってしまう」
この間をどこに設定するかが、職人として配合を組むときのひとつの腕の見せどころでもあります。
コーンスターチや米粉を入れる意味
コーンスターチで軽さと口どけをプラス
コーンスターチは、とうもろこしのでんぷんです。
薄力粉の一部をコーンスターチに置き換えると、
- 口の中でほろっとほどけやすくなる
- 生地がふわっと軽く感じられる
といった変化が出ます。
「ふわふわなのに、口どけが早くて重く残らないシフォン」にしたいときには、コーンスターチを少し使うと良い方向に働きます。
ただし、入れすぎると
- 生地の骨格が弱くなって、焼き縮みしやすい
- 表面が少しデリケートになり、割れやすい
といったこともあるので、あくまで“補助的な粉”というイメージで使うのがバランスが取りやすいです。
。当店では焼き菓子を含め、コンスターチを含むお菓子が多いのですが、軽く口溶けの良い食感を出すために大切な材料だと考えています
米粉でしっとり感と保水力を上げる
米粉を一部に使うシフォンも、最近はよく見かけるようになりました。
米粉は、小麦粉に比べてグルテンが発生しない分、
- もっちり感やしっとり感を出しやすい
- 冷めてからもしっとり感が続きやすい
という特徴があります。
一方で、小麦粉だけのときと比べて、
- 生地の混ぜ方や水分量の調整がシビアになる
- 焼き上がりの色が少し淡くなりやすい
という面もあります。
「グルテンを抑えつつ、しっとりさせたい」のか
「ふわふわ感を最優先したい」のか
どこにゴールを置くかによって、米粉をどのくらい配合するか、そもそも使うのかどうかが変わってきます。
米粉は加熱するとα化と言って糊化、粘りを持ちます。しかし冷えるとβ化と言って老化、乾燥して硬くなってしまいます。
お米で例えると水分を合わせて加熱するとモチモチになり、乾燥するとカピカピになる。米粉を入れることで食感も良くなる反面、おいしさの日持ちも短くなるので、入れる入れないの判断はシビアなところです。
「ふわふわ」と「しっとり」を両立させる考え方
粉の量と水分量はセットで考える
粉の量と水分の量は、いつもセットで考える必要があります。
粉が増えれば、それだけ水分を抱え込む力も必要になりますし、
水分を増やせば、その分だけ粉や油、メレンゲとのバランスを整えないと、生地は安定しません。
- 薄力粉を少し減らしてコーンスターチを入れたら、水分をほんの少し減らしてみる
- 米粉を混ぜてしっとりさせたいなら、逆に油の量は控えめにしてみる
といったように、「粉だけ」「水分だけ」を単独でいじるのではなく、「増やしたらどこかを減らす」「軽くしたらどこかで支える」というイメージで全体を見ていきます。
フレーバーによっても、粉のベストバランスは変わる
同じシフォンでも、プレーンとチョコレート、抹茶、紅茶では、粉のバランスを少し変えることがあります。
- ココアや抹茶パウダーを入れると、その分粉の総量が増える
- ナッツやチョコチップなど固形物を入れると、生地の骨格が必要になる
こういったときは、薄力粉を少し減らしてコーンスターチを足したり、逆にほんの少し強力粉を混ぜて生地を支えたりと、微調整しながら「そのフレーバーに合う食感」に寄せていきます。
シフォンは「どのフレーバーも同じ配合」で作ろうとすると、どうしてもどこかで無理が出やすいお菓子です。
逆に言えば、粉の種類と量を少しずつ変えていくことで、その味に一番合った食感に近づけていくことができます。
家庭で粉を変えてみるときのコツ
まずは全体量の「1〜2割」から様子を見る
家庭で粉をいじってみたいときは、いきなり大きく変えずに、
- 薄力粉の1〜2割だけをコーンスターチに置き換えてみる
- 薄力粉の一部を米粉にする場合も、まずは1〜2割から
といったように、少しずつ変えて様子を見るのがおすすめです。
配合を大きくいじりすぎると、焼き時間や温度、混ぜ方まで全部見直さないといけなくなることもあります。
まずは「粉だけを少し変えてみる」くらいからスタートして、焼き上がりや翌日の状態を観察していくと変化が分かりやすいです。
「理想の一口」をイメージしながら調整する
粉を変える目的は、あくまで「自分の理想のシフォン」に近づくことです。
- 口に入れた瞬間はふわっと軽く、あとからしっとり感が残るのが好き
- 逆に、ややもっちりしていて、1カットで満足感がある方が好き
人によって理想の一口は違います。
どんな食感を目指したいのかを先にイメージしてから、
粉の種類や量を調整していくと、試行錯誤も楽しくなってきます。
第3話では、「粉の種類とブレンド」という視点から、シフォンの食感についてお話ししました。
次の第4話では、いよいよメレンゲと焼成、オーブンの温度や時間によってどう変わるのかという「仕上げの部分」について触れていきます。
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